国立病院看護研究学会は、2003年に「政策医療における看護の質向上を図り、看護学の発展を通して人々の生活と健康に寄与すること」を目的に設立されました。会員数は最大2万人でしたが、年々減少し、2025年9月末現在名簿に登載されている会員は1500人を割り、学会参加者や発表演題数も減少してきています。これは、多様な要因があると思いますが、専門性の高い学会が多数存在していることが大きな要因であると理事会では考えております。
このような状況をふまえて、2024年12月に開催されまして総会におきまして、 今年度に「当学会の今後の在り方を検討する」ための活動計画と予算案が承認されました。それを受けましてアンケートと調査を実施し、理事会で以下の通りの方針としたいことを検討いたしました。
今後方向性を検討するための参考資料といたします。今後、皆様のご意向をふまえ理事会での案を皆様にお伝えし、2025年12月の総会において今後の方向性の審議をいたす予定です。
〇国立病院看護研究学会の今後のあり方について
会員に対する調査結果及びこれまでの活動をふまえ、理事会・評議員会にて審議した内容
1. 国立病院看護研究学会は2026年度末(2027年9月30日)をもって閉会とする。2. 国立病院看護研究学会学術集会の最終開催は、2026年度12月とする。
3. 国立病院看護研究学会誌最終号は、2026年10月投稿締め切り、2027年7月頃発行とする。なお、すでにJ-Stageに掲載されている2023年以降の論文の閲覧は今後も継続できる。
4. 研究助成活動は、2年間の助成であることから今後は実施しない。
5. その他すべての活動は2027年9月30日までに終了する。
6. 国立病院看護研究学会における残余財産については、本学会の趣旨に沿う方向で検討し、経過は会員に報告する。
7. 2025年12月の総会において上記の方向性について審議する。
会員調査は、郵送法およびメールにて案内し1,337名の会員のうち618名(46.2%)の方からの回答を得ることができました。多くの皆様の回答に感謝いたします。主な結果は以下の通りです 。
1.国立病院看護研究学会の存続希望に関する意向「存続希望」:90名(14.6%)、「存続を希望しない」:304名(49.2%) 、「答えを決めかねる」:224名(36.2%)
2.国立病院看護研究学会「存続希望」「存続を希望しない」それぞれの理由
2-1 存続希望の理由 :学術集会や研修、論文投稿や研究支援
2-2 存続を希望しない理由 :約9割は「他の学会で代用可能」
〇国立病院看護研究学会のあり方に関するアンケート結果をふまえた報告書
・実施期間:2025年8月1日〜8月31日
・方 法 :郵送およびメールで QRコードを伝え、各自に無記名で入力してもらう。
・対 象 :正会員1,442名中のうち、1,377名に郵送し、あわせて986名にメールでも回答を依頼した。
・有効回答:618件(46.2%)
・結果の概要(図表)
1.学会の存続は、90名(14.6%)が希望、304名(49.2%)が希望せず、答えを決めかねるものも 224名(36.2%)いた(表1) 。
2.存続希望者は、学術集会や研修、論文投稿や研究支援を望んでいる。会費の値上げ、会員特典の明 確化、学術集会に参加しやすい工夫(隔年開催、ハイブリッドなど)、研究支援や研修会開催を望む自由記載があった(表2) 。
3.存続を望まない304名の約9割は「他の学会で代用可能」と回答した(表3)。
4.現在の活動で満足度が高めなのは「年会費(の安さ)」「学術誌の量や質」「学術集会」(図1)。
5.不満の割合が高めなのは「研究支援」「教育活動」で、「活動が見えない」「会員が限定的」「発表演題が少ない」などの自由記載があった(表5) 。
〇結果の分析
会員の5割弱の回答が得られたことから、今後の方針を決定するために十分な会員の意向を反映していると考える。
本学会の目的は、「政策医療看護」への貢献であり、国立病院機構等の職員が会員に多いことが特徴であり、満足する点として関連学会員との討議ができたことが多く上げられていたが、一方で会員が限定的という不満足の意見もあった。また、会員の利便性を考慮して会費の値上げは最小限にとどめてきており、会費が安いことが最も満足として自由記述の回答数が多かった。多様な項目で同様な項目で満足・不満足と相反する回答も多かった。多様な会員の認識があったことがわかる。各事業の満足度はいずれも「どちらともいえない」が最も多く、活動について参加度が低かったり、広報活動への工夫が必要な点があった可能性が示唆される。いずれにしても、活動は好意的な意見が多かったと考える。
これらをふまえても、学会存続の希望は少なく、より専門的な学会への参加を希望する会員が多いことが分かった。ほかの結果もふまえ、閉会の方向性は妥当と考える。

